― クマ治療後に生じる違和感・膨らみ・左右差でお悩みの方へ ―
近年、目の下のクマ治療は年々認知度が高まり、治療を受ける方が急増しています。
それに比例する形で、クマ治療後に生じる「目の下のシコリ」という合併症の相談も、確実に増加しています。
当院には、以下のようなお悩みを抱えた方が、ほぼ毎日のように来院されます。
これらは決して珍しいケースではなく、現在のクマ治療の普及状況を考えると、今後さらに増えていくと考えられます。
Question1
このような事態が起こる最大の背景には、美容外科手術の普及と、それに伴う治療ハードルの低下があります。
クマ治療は
という理由から、「気軽に受けられる治療」という認識が広まりました。
結果として、日本全体でのクマ治療の手術件数は大きく増加しましたが、一方で、十分な修練を積めていない医師が比較的簡単な手術として施行してしまうケースも増えています。
クマ治療は決して単純な手術ではなく、
が求められます。
これらが不十分な状態で行われた治療が、数か月〜数年後に「シコリ」という形で表面化してくるのです。
本ページでは、クマ治療後に生じる目の下のシコリについて、原因・発生部位・深さ・除去方法を専門的に解説していきます。
Question2
目の下のシコリの原因として、最も多いのは注入治療です。
現在、日本で広く行われているクマ治療の代表的なメニューに 脱脂+脂肪注入(コンデンスファット)があります。
この治療は、
という構成で、クマ治療の「登龍門」として多くの外科医が最初に経験する手術です。
簡便で、術後早期は良好な経過をたどることが多い一方で、
によって、脂肪が生着不良を起こし、硬いシコリを形成してしまうことがあります。
次に多く相談されるのが、PRP(Platelet Rich Plasma)に伴うシコリです。
PRPは自己血液から抽出される多血小板血漿で、成長因子を多く含み、組織修復や再生能力を引き出すと考えられています。
一時期、このPRPに成長因子を混合して注入する治療が流行しました。 当初は「シコリにはならない」と説明されることが多かったものの、 時間の経過とともに徐々に肥大し、不自然なシコリとなる症例が多数確認されています。
意外と多いのが、ヒアルロン酸によるシコリです。
ヒアルロン酸は吸収されるという認識が一般的ですが、10年以上前に注入されたヒアルロン酸が、目の下に残存しているケースも珍しくありません。
患者様自身が「そんな昔の注入は関係ない」と思い込んでいることも多く、結果として原因が分からないシコリとして認識されてしまいます。
頻度は低いものの、
なども、確実にシコリを形成します。
Question3
目の下のシコリには、発生しやすい部位に一定の規則性があります。これは、注入治療において多くの医師が「同じ場所」を狙うためです。
涙袋の部分。この部分にシコリがある人は涙袋に注入施術をした人がほとんどです。基本的にはヒアルロン酸または脂肪注入を入れることが多いです。大量には入っていないが、浅い分目立ちやすい部分となってます。
元々クマの眼窩脂肪が存在していた部分であり、脂肪を取りすぎてそれを埋めるために注入するコンデンスファット、または色クマを改善させるために注入したナノファットが浅すぎたり多すぎたりするとこの部分にしこりができる。特徴としては笑った時に下で何かが動いてるように見える。
靭帯の凹みの下にあり、凹みを馴染ませるために入れる注入により生じます。この部分のシコリが最も多く、入っている層も様々です。全ての注入施術が適応となる場所で量もかなり入れられてしまいます。真顔でもかなり大きく目立つ人もいれば、笑った時にそら豆大にボコっと出てくる人もいます
この部位はティアトラフの靱帯とその下にあるゴルゴラインに挟まれているSoofという脂肪のある場所です。ここは強固な靱帯に挟まれている部分であり、脂肪注入やその他の注入治療がたまりやすい場所です。頬全体に入れた注入が集約されて、ここがボコって目立つことがあります。これをiatrogenic malar mound(医原性の頬の膨らみ)ということもあります。
Question4
シコリは
皮膚 → 眼輪筋 → SOOF → 骨
という層構造の、どこにでも存在し得ます。
ここで多くの方が誤解するのが、 「浅いシコリの方が簡単に取れるのではないか」という点です。
Question5
目の下の皮膚は人体で最も薄く、厚さは1mmにも満たしません。
眼輪筋も非常に薄いため、シコリの直上がすぐ皮膚という状況が多くなります。
この状態で奥からシコリを探しに行く際、わずか数mmの操作ミスで皮膚損傷を起こすリスクがあります。
一方、深部に存在するシコリは、下方が骨で支えられているため、比較的安全に除去が可能です。
このため、目の下では「浅いシコリほど除去が難しい」という逆転現象が起こります。
もちろん頬にあるシコリを頬をバッサリ切って取り出そうとするのであれば浅い方が簡単ですが、目の下のクマ治療が原因でできたシコリについては顔の中心部にあるので、そこをメスでいきなり切ることは好ましくありません。クリニックによっては頬にメスを入れて、傷を平気で作ってしまう施設もありますが、やはり審美面からすると良くありません。
Question6
シコリ除去は‟経結膜‟または‟睫毛直下の経皮的‟のアプローチとなります。
経結膜というのは下まぶたの裏側のピンク色結膜の部分から切開を行って、その部位からシコリを除去しにいきます。脱脂術や裏ハムラ法と同じ場所からの切開となり、見える部位に傷が来ないことが特徴となります。深い部分や目から近い部分のシコリについてはこの方法で除去が可能です。
ですが、浅い層のシコリの場合はシコリからの距離が遠くなること、結膜からの狭い視野のため切除を行うことは困難となってしまいます。
なので経結膜から切除できるシコリとしては、前述した青と緑のシコリがメインとなります。青や緑のシコリは注入の性質上、深い層に入っていることがほとんどですが、施設や医師によってはかなり浅い部分に注入が行われていることがあるので、経結膜から切除することは難しい場合もあります。
睫毛直下の経皮的アプローチは睫毛のちょうど真下の部分の皮膚を切ってシコリを切除しにいきます。目頭の部分から目尻のシワに沿って切開を行いますが、傷跡自体はかなり綺麗に治る部位なので心配はいりません。
結膜からの切開と違ってかなり大きく視野を広げられるので遠くの大きなシコリも除去が可能となります。結膜からでは届かなかった場所や見えにくい場所である赤や黄のシコリも対応できます。
また、皮膚の直下にあるシコリも皮膚を丁寧に剥がしていくことによって切除を試みることができます。
下眼瞼結膜から切開を行い、表に傷を残さずに除去。深部・目に近いシコリに適している。
視野が広く、浅層・遠位・大型のシコリに対応可能。傷は時間とともにほとんど目立たなくなる。
これが基本的な考え方です。
Question7
ここからは、実際に多くみられるシコリのタイプを、部位別に詳しく解説していきます。
シコリは「どこに・どの深さで」存在するかによって、除去の難易度やアプローチが大きく異なります。
涙袋部位のシコリは、比較的まれではあるものの、非常に目立ちやすいという特徴があります。
近年の主流はヒアルロン酸注入ですが、一部の施設では以下のような施術が行われています。
ヒアルロン酸は溶解可能ですが、脂肪・PRP・アクアミドは半永久的に残存するため、形態異常が生じた場合、自然改善や注射による修正は困難となります。

涙袋部位は、
という構造のため、わずかな量でも膨隆が強調され、シコリとして認識されやすい部位です。
多くの場合、皮膚直下〜眼輪筋直上にシコリが存在するため、結膜側からのアプローチは困難で、睫毛直下の経皮的アプローチが必要となります。
この部位は、脂肪注入によるシコリが最も多く発生します。
原因は、日本の多くの大手美容外科で行われている 脱脂+脂肪注入(コンデンスファット)という治療構成にあります。
この部位のシコリには、2つの代表的な存在層があります。
① 眼窩隔膜直上・眼輪筋下(深層)
比較的深い位置にあるため、まぶたの裏側からの到達が可能です。この部位のシコリの特徴としては表情を作った時や目を動かしたときに隔膜と連動して動くので筋肉の下で枝豆大の何かがモゾモゾしているように見えます。

② 眼輪筋内〜皮膚直下(浅層)
かなり浅い部分にあるため、裏側からの到達は難しいことが多く、皮膚側の切開を必要とすることが多いです。皮膚直下にいるものは無表情でも明らかにポツポツしこりとして認識できて、筋肉内にいるものは目回りの表情の変化とともに下でうごめくシコリとして現れます。
この部位の評価では、「動くか・動かないか」「表情との連動性」が極めて重要です。
シコリ除去相談の中で、最も多く、かつサイズが大きくなりやすい部位がここです。
ティアトラフ靱帯は、注入物質を物理的に弾く性質があります。
さらに重要なのは、
という解剖学的特徴です。

この構造を理解せず、表面の凹みだけを見て注入すると、注入物は靱帯を越えられず、下方に大量に貯留します。
厄介なことはこの部位は眼窩下神経の開口部の近くであるため、あまりにも大量にシコリが存在しすぎるとすべては除去できないという点である。また、この部位への注入治療は基本的に骨上にすることが一般的であるため、ほとんどのシコリはSOOFと言われる脂肪層の中に存在しているが、まれにさらに浅い筋肉内(眼輪筋内)に存在していることもある。筋肉内にいる場合の特徴としてはニッコリと笑うと八の字に目の下にポコ゚っとシコリが出てくることである。無表情の時には目立たないが笑った時にこの場所に枝豆が現れる人は筋肉内にシコリがあると思っていてよい。
この部位のシコリはサイズが小さい、または距離が近い以外の場合は到達や摘出が困難となるため皮膚を切開して除去しに行くことがほとんどである。
この部位は眼窩下神経孔の近くに位置するため、シコリが巨大な場合、安全性の観点から完全摘出が困難なこともあります。

この部位は、
という2本の強固な靱帯に挟まれた空間です。
目の下や頬に注入された脂肪・フィラーが、靱帯を越えられずにこのスペースへ集約され、不自然な頬の膨らみ(医原性 malar mound)を形成します。
単なる「頬のたるみ」と誤認され、不要な引き上げ治療が繰り返されているケースもあります。

Question8
目の下のシコリは、
を正確に評価しなければ、適切な治療方針を立てることができません。
「時間が経てば良くなる」
「もう一度注入すれば治る」
そうした対応が、さらに状態を悪化させているケースも少なくありません。
クマ治療後の違和感や膨らみ、左右差でお悩みの方は、一度、専門的な評価を受けることをおすすめします。